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新しい命
さあ喜べ
舞い降りてきた
結晶に
冬になり、部屋いっぱいに、卵が集まった。その中には、ユタの子もいる。今日か明日には、新しい命が誕生しそうだ。
「総長。力不足な自分で申し訳ないです」
ユタは、マルウムがあの部屋から出てこなかった事がトラウマになり、ずっと私と共に大聖堂の中を行動していた。
ある夜ユタは、大聖堂の片隅に、暗くて暖かい場所を見つけた。そして今回、そこを自分の子を育てる場所として選んだ。
もうすぐ父親となるユタは、自ら今夜の食料探しを志願してきた。
「大丈夫だよ。今夜は私も一緒に行こう」
「あなたには、何とお礼を言えば良いか……」
「私は、いつも新しい命のために生きているのだ。以前は君たちのために。そして、今度は君たちの子供のために。生きる意味があるだけだ」
「総長……。自分は、昔から総長を父親のように慕っておりました。期待に応えられるように頑張ります」
我々の部隊は、仕事開始の合図と共に大聖堂の闇に散って行った。
「ユタ、今夜は飛ばない方が良い。人間の動く振動を感じる。気を付けて行こう」
ユタと二人で床を滑るように走る。あとワンブロック進もうとした時、私はユタを止めた。
「姿を消せ」
暗闇の中に僅かな明かりが灯った。人間が起きていたのだ。
闇に溶け込み、微動だにしないまま時間が過ぎていく。
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