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理不尽なクレームに頭を悩ませて机に座ると、また背後から声をかけられた。
「どうしたの、青倉君」
彼女は緑沢菜摘さんという、俺の先輩社員だ。この職場で唯一尊敬出来る人間である。俺に対して優しく接してくれる上に仕事も出来る。何より国立大の農学部出身だ。国立理系を出ているという事実に、俺は頭が上がらなかった。俺の方が大学のレベルは高いものの、高校時代に理科が苦手で文転した過去があるため、尊敬のまなざしで見るようになった。
「く、クレームが来たんですよ、授業が分かりにくいって…俺は難関国立大卒なのに…」
「まあ、あまり気にしなくてもいいと思うよ。こう見えて私はあなたに期待しているし」
彼女の言葉に俺は安堵した。そうだ、俺は間違っていない。なぜなら難関国立大の出身だからだ。
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