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低血圧である僕は、朝が苦手だ。
そのはずだったけど、その日は自然と目が開いて、頭と体の重さもなくて、スッと起きることができた。
それでも彼女には敵わなかったけど、布団から出てキッチンへ行くと、ちょうど朝食の支度をしていた。
「あれ、早いね」
「うん。なんか、体がラクで」
彼女の手には二つの卵。フライパンは火にかけられて熱せられていて、今から目玉焼きを作るところらしい。
「僕も手伝うよ」
そうして、彼女が一個に、僕が一個。フライパンに卵を割り入れた。
じゅうううと小気味よい音がして、みるみるうちに透明だった白身が真っ白になっていく。こうして見ると、二つの黄身が寄り添っているのは、本当に何かの目に見えなくもない。
でも今は、違うように見えた。
ふたつの目玉焼きが寄り添って、くっついていく。
それは、僕と彼女、二人の姿に重なって見える――気が、しなくもなかったのだった。
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