キミの目玉焼き

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 翌日。出社してから真っ先に先輩の元へ向かう。彼女には悪いと思いながら、どうしても気になってしまったのだ。 「おう、おはよう。昨日は悪かったな」  口では謝罪しながら、ニヤケ顔を浮かべている。本当に悪いと思っているのか? 面白がっているのはないか。 「いえ」 「あれからどうしたん?」 「特に何も。普段の彼女に戻ってましたし、それ以上聞けるわけないでしょう」 「んで、俺のところに来たと。やっぱり気になるか?」 「そりゃあ……」  悔しいが、言うとおりだった。  先輩は自分のスマホを操作して、こちらに画面を向けた。  そこには、今より少し若く、高校の制服に身を包んだ彼女が映っていた。ただ、今の淡い栗色の髪と違って真っ黒だし、前髪が長くて目元が隠れている。全体的に少し垢抜けていないが、その陰気さには、かえってゾワゾワするような美しさがあった。  そして、頬にガーゼを貼って、首にも包帯を巻いていた。 「綺麗だろ。久しぶりに会ったら雰囲気変わってて驚いたけど、美人なのは相変わらずだった」 「……学生時代の恋人の写真なんかスマホに入れてるんですか」 「バッカ。お前が昨日のこと聞きにくるだろうから、アルバムひっくり返して探したやったんだよ。何なら送ってやるぞ」 「……お願いします」  それはそれとして。 「昨日の、どういう意味なんですか?」 「そのままだよ。あいつ、人に変なものを食わせるのが好きなんだ」 「変なものって……」 「俺の時は、爪とか髪の毛とか、血だった」  予想外の答えに、思わず喉に胃液がこみ上げた。 「あいつ、変態なんだよ。カニバリズムの逆、他人に自分の体の一部を食べてもらいたい、被食願望ってやつ」 「うそ、だろ」  思わずタメ口。 「いろいろ混ぜられたぜ。バレンタインのチョコには血液、クッキーには爪。料理うまいんだよな。混ぜものあっても美味いんだ。でも、入ってる。あいつの体の一部が。今はどうか知らないけどな。気持ち悪いだろ? だから別れた。無理だった。お前も気をつけろよ。まあ、お前にもその気があるなら別にいいけどな。お似合いだし。――さあ、話はおしまいだ。仕事しようぜ」  そういって、先輩はいやらしい笑みを浮かべて席を立った。
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