たまごの取締人

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飼料生産農場を見学し、制御室に入ると初めて30人程の人がモニターを観ながら打合せをしていた。 「ようこそ、お出で下さいました。風の里ファームの管理人をしております吉祥(きっしょう)美月(みつき)です」 名刺交換をしてから先輩がいくつか質問をする。 どうやら完全自動システムを導入する試用施設らしい。 「施設内の電波の制限をしていまして、ご不便をおかけしました」 なるほど。誤作動防止のための措置の様だ。 屋内、屋外の双方の利点を生かした農業の活性化を目指すプロジェクトらしい。 モニターを観ながら打合せをしている人たちに目を向けると年齢も様子もまちまちだった。 僕の視線に気づいた管理人が微笑みを向ける。 「理想のチームなんです。一番年長は78歳、昨年まで養鶏業を営んでいたその道のプロです。データからだけでは解らない鶏の歩き方や羽の色つやからその日の体調を見抜くんですよ。一番の若手は18歳です。ドローンプログラミング担当で、お互いリスペクトしています」 様子を観ていてよくわかる。 お互いの話をじっくり聞きつつ、意見交換をしている。 その様子が何とも楽しそうだ。 「風の里フォームができる前は限界集落だったんです」 管理人は近い将来のあり方を嬉しそうに語っていた。
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