たまごの取締人

その年、僕は国家公務員試験に合格。

食料自給率が40％を切る、この国の一次産業を活性化させたい思いで農林水産省の採用試験を受けた。

強い思いが通じたのか見事合格。晴れて僕は役人のたまごになった。

と、喜んでいたのもつかの間、新たに可決した法案の取締人に任命される。

役人のたまごの僕が鶏のたまごの取締人ですか？思わず一人突っ込みを入れてしまった。

異例中の異例だったのが、通常は法令施行まで数年の猶予期間が設けられるが、今回はたった半年。

半年以内に法令を遵守した完全隔離施設を建設しなければ鳥類のたまごを取り扱う事ができない。

そもそも、一次産業自体が莫大な利益を生む産業構造になっていないのだから、既存の事業者は手の打ちようがない。

支援金や補助金制度は並行しているものの、当面の運転資金すらままならない事業者がほとんどだ。

で、僕が任命された取締人が必要という訳だ。

って、丸っきり悪役人じゃないかと言いたくなる。

そんな事を思いながらも『たまご取締人』の訓練を受けつつ半年が過ぎた。