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「どうしたんですか?」
「電波が届かない」
除菌室から出たのに不感地帯って。さっきはドローン飛んでたし。
「まあ、案内に従うしかないんじゃない?たまご君、君はここからの工程をくまなく記憶しておいてね」
たまご君?って僕の事ですか?
僕は心の中で先輩に問いかける。
「そうそう、君のこと。たまご取締人だけに素晴らしいネーミング。君は今日からたまご君」
って、おいっ!ここにいる全員がたまご取締人なんだから。
ああ、僕は『君』で先輩は『さん』なのか?
でも、4人いるし、男女比同じだし、どっちがどっちって。
「冗談、冗談。妙なネーミングもハラスメントになるからね。気を付けたまえ」
はっ?!気を付けるの先輩ですよね?
唖然としている僕を見かねた調整官が「彼女はあなたの緊張を解くために冗談を言っただけ」と微笑んでくれた。
確かに、突然密室の除菌室に入れられて、オール機械音の応対に戸惑ってはいた。
「手、震えてるから」
運転していたもう一人の調整官が僕の手に視線を向ける。
本当だ。フルフルと手が震えて力が入らない。
「初任務で、これはかなり精神的にキツイでしょう。車両除菌で気を失ってたし、我慢することはないけれど、何が待ち受けているか分らないから気をしっかり持ってもらう為にね。これからの工程記憶してね」
そういう事ですか。なら、そうやって言ってくれればいいのに。
でも、最初からそう聞いていたら確かにもっとビビッてたかも。
このまま監禁でもされそうな施設だし。
先輩方は怖くないのかな?
「いやいや、怖いですよ。でも、殺されることはないから大丈夫」
って、僕さっきから心の中で呟いているのに先輩なんで返答できるの?
その方が怖いんですけど。心の中読めちゃう人ですか?
「う~ん、読めるっていうか、感じる?かな?子供の頃から、皆が緊張する場面や場所にいくと色々感じるの。結構便利でね。命の危険がある場面に遭遇すると胸の所でたまごが割れるような感覚がするから安心して」
えっ、何それっ!たまごが割れる感覚って。
それ感じちゃったら命危険なんでしょ?感じる前に教えてよ。
「はははは・・・・」
電波の入らない通路を前に進めと機械音に指示され僕らは施設の内部へと進んだ。
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