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すると、タマキは何となく気恥ずかしそうに戻って来た。学生Bにはそんな風に見える。
ただ、怪我をしたわけでもないし、見た目に変わった様子も見られない。
「何も起こらなかったか…」
学生Bはきっと暗闇に怯えただけだろうと思い、タマキの頭をそっと撫で、抱上げる。
その後、その辺に落ちている物を色々と投げ入れてみたものの、やはり何も起こらない。
学生Bには、何かその現実が当たり前に思えて、一年前の出来事がまるで嘘であったかのように思えて来る。
結局、学生Bは描いていた欲望は捨て、現実の厳しさを受け止め諦めて帰ることとなった。
余談だが、その後まもなくのことである。
学生Bの家でもう一匹飼っていた雌犬の”アーナ”がご懐妊となった。その後無事可愛い子犬が3匹生まれることとなる。
ただ、一緒に飼っているタマキは雌犬である。それに、アーナと雄犬との接触も記憶になかった。
なので、アーナの懐妊は家族全員不可解な出来事であった。
だが、その謎もご懐妊発覚の数日後におおよその推測に至ることとなる。
それは、学生Bが薄茶色のタマキをお姫様抱っこの様に仰向けに抱上げた時に、その異変に気付いたからである。
学生Bはその事実にもの凄く驚いたが、心当たりは直ぐに思い当たった。
こんな有り得ない事実、思い当たるのはあの大木での出来事しか考えられないからである。
やはり、あの大木には緑の女性が今なお住んでいたのだ。
そして、タマキと緑の女性は、あの穴の中で何かの約束をしたのかもしれない。学生Bはそう思った。
「それにしてもタマキ、おまえ今までそれをどうやって俺にに隠してたんだ」
学生Bは、薄茶色の毛に覆われた肌色であるタマキの”金のたまご”と”銀の棒”を見つめ、そう呟いたのである。
<おしまい>
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