金のたまご銀のたまご

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 二人は競うように食べ始める。特に学生Aは一心不乱にである。  もちろんその理由はある。  彼には弁当の他に食後のデザートとして持参した、大好物のゆでたまごが待っているのだ。  学生Aはいち早く食べ終わると、早速バッグからゆでたまごを取り出して殻を剥き始めようとす…。  …るのだが、そこでお約束のように手が滑てしまう。 「おぉ~っと」  ゆでたまごは、坂であることを良いことに勢いよく転がって行く。  さすが、”ゆで”では”生”よりも転がりが良い。あっという間に、大木の根元にあるアライグマでも余裕で住める程の穴の中に入ってしまったのである。 「もったいない」  そう言う相方学生のB。それに、 「いや、まだ殻は剝いてない。拾えば大丈夫!」  拾う気満々に応える学生A。 「まあ、確かにな」  相方の貧乏学生Bも即同意。  まずは、たまごの行方の確認だとばかりに、学生Aは穴の中を覗き込もうと身を屈める。  中は暗くてよく見えないが、ゴソゴソと言う音が聞こえて来た。  音からすると、それなりの大きさの生き物に思える。
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