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金色と言うのは、人にとって魅力的な色である。純金を連想すれば、更にその魅力は高くなると言うもの。
だが、緑の女性の持つそのたまご、これにはどうにも重みが感じられない。
金メッキなのか、単に元々金色をした卵なのか、そんな感じなのである。
それを感じて、学生Aは瞬時に思考を巡らせた。
金メッキの卵だったらメリットはあるだろうか?
飾る以外に使い道はあるだろうか?
彼にはその答えが思いつかない。
じゃあ、本当に単に金色に生まれたたまごだとするとどうだろうか?
ちょっと食べる気にならない。
万が一、孵化して変な鳥が生まれても困るだけである。
であれば、間違いなく食べられる自分のたまごの方が価値として上である。満腹ではない今であれば尚更である。彼はそう判断した。
「…それは、素敵なたまごではありますが、私の落としたものはそれではありません」
一応、緑の女性が不可思議な存在なので、気分を害さない様に丁寧な言葉は心がける。
「では、こちらの卵ですか?」
どこから出したのか次に銀色のたまごを見せて来た。
金色の次に銀色である。
その行為に対し、学生Aは直ぐに連想するものがあった。
そう、斧かたまごかの違いを除けば、子供のころに聞いたあのおとぎ話とそっくりなのである。
彼はその話を思い出してみる。
記憶では、確か正直に答えたことにより、主人公の人物は得をしたはずである。正直が一番であったのだ。
いや、それでなくても金色のたまごと同様、女性が手に持つたまごは純銀とは思えない軽さを感じる。
緑の女性は、ホイホイと軽そうに銀色の卵を持つ手にスナップを効かせて、何度も軽く浮かせているのである。
それにだ、仮に銀色のたまごが食用に叶うものだったとしても金色同様、食べる気にはなれない。それに、やはり変な鳥が孵化しても困ってしまう。
であれば、返答は一つである。
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