金のたまご銀のたまご

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 学生Aはその1か月のバイトが終了すると、直ぐに帰省した。  そして、一連の話を神主である父に話すと、金のたまご2つと銀の棒を手渡した。  手渡された神主の父は暫くそれを眺めるていたのだが、ひとつ頷くと何の疑うこともなく、その3つの物体を芳しい配置で社殿に飾ったのである。  そして、その一年後のこと。  その神社は子宝に恵まれることで全国的に有名となったのである。  この一連の出来事を目の当たりにして羨んだのは昨年学生Aと一緒にアルバイトに励んだ相方の貧乏学生のBである。  自分もあやかりたいと思うのは人として自然な心理である。行動に移すことは、咎められることではないだろう。  ただ、彼も一人で実行するのは心細かった。  かと言って他の人には知られたくないし、話しても信じてもらえるとは思えない。  そこで彼の選んだのは、愛犬の雌犬”タマキ”を連れて、あの場所に行くことである。  小型犬のタマキは賢く芸達者。もしかすると何かの役に立つかもしれない、そう判断したのである。  もちろん、それは後付けの理由で初心は別にあった。  大学も夏休みに入り、アルバイトも休みのある日のこと、大学生Bは緑の女性が現れたあの大木を探しに出掛ける。愛犬のタマキを連れて。  現地に着いてみると、昨年の工事現場はすっかり整地も終わり、住宅も立ち始めていた。  記憶の風景とは少し変わっていることもあり、目指す大木を探すのは少し苦労したが、ラッキーなことに大木の周辺は住宅地外れの公園となり、その姿は健在であった。  公園はかなり広く大きな池もあり、池には木製のおしゃれな渡橋も掛かっていた。芝生も奇麗に整えられ、親子連れの姿が多数見られた。  それにも拘らず、いくら奥まったところに存在するとはいえ、一際雄大な姿を残す大木は人目から遠ざかり、付近に人影は無かった。  学生Bとしては、もう少し公園に来ている人たちに関心を持たれても良いと感じたが、今の彼にとって、それは好都合である。  早速、誰も来ない内に予定の行動を実行に移すことにする。  あの不思議な女性が現れた大木の根元にあった穴も記憶のまま存在しているのである。
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