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学生Bは、まず10円硬貨をその穴に転がしてみる。
願うは、金貨になって戻って来ることである。だが、
「しーーん・・・」
いつまで経っても何も起こりはしない。
次に50円硬貨を試してみる。
しかし、結果は同じ。
更に100円硬貨を。
やっぱり何も起こらない。
その結果に肩を落とす学生B。
しょうがないとばかりに、せめてお金を取り出そうと穴に手を入れる。
もちろん、硬貨を探すためだが、それらしきものが手に触れない。
予想以上に奥まで転がってしまったのだろうか?そう思う。
出費は合計160円。貧乏学生には、勿体無い金額だ。
なので、連れて来た小型犬のタマキを試しに穴の中に入らせてみることにする。
タマキがお金を咥えて出て来るとはあまり思えないが、まさかを期待してみる。
本当のところ、一番の期待はお金を咥えて来ることよりも、あの女性がタマキの可愛さに釣られて外に出て来るかもしれないことにあった。
さらに薄茶色のタマキの毛が金髪になるとか…それも面白いとか頭を過ったりもする。
学生Bは、何かが起こることにワクワクしながら暫し待ってみる。
そして、その何かが起こる。
穴の中から「ギャフン」に近い一泣きが聞こえて来たのである。それは、間違いなくタマキの鳴き声である。
「タマ、タマキ、どうした。タマキ戻っておいで」
学生Bは慌ててタマキを呼び戻す。
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