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その国では、かつてより懸念され続けていた少子化による人口減少が、どうにもならないところまで来ていた。働き手不足解消のために女性活用を進めたはいいが、女性が出産・育児で労働に従事できない期間が生じることが、社会的に大打撃となったのである。
成人男女はとにかく働いてほしい。人口増のために子どもも増やしてほしい。女性は出産ギリギリまで働き、産んだ後もすぐに働いてほしい。
社会が回らないのだ。
国はそう言った。
当然、女性たちは怒った。
妊娠が判明してから十月十日を自分のお腹の中で育て、出産時には、交通事故で全身に大けがを負ったような状態と言われるほど心身ともに消耗するのである。
命がけで産んで、人口を増やしたことに貢献したというのに、ねぎらいもなく休むこともできず、すぐ働けというのか。
女性たちの怒りは、静かに、そして硬く、その国に浸透し、いつしか女性たちは、子どもをつくることを忌避するようになった。
子どもを産むことが、社会的に敬遠される雰囲気が広まり、人口減少はますます、そして急速に進んでいく。
国も、社会も、この矛盾にどう取り組めばいいのか、途方に暮れていた。
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