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『CUNAE』はそんな社会的空気の中で登場したのである。
妊娠が判明した時点で、受精卵を『CUNAE』に移す。あとはたまご型の『CUNAE』が育ててくれる。育った赤子が生まれるタイミングが来たら、産院で疑似産道を接続し、赤子はその道を通って世に生まれる。
母体への負担は、初期の受精卵を取り出すときのみ。
嫌悪感を示す人々も確かにいた。
生命はそんな簡単に育ちはしない、と懐疑的な人々もいた。
それでも、『CUNAE』は受け入れられた。
赤子が生まれると、はやり"ヒト"という生き物は喜びを感じるのだ。
成人男女が50人いて、そのうち子どもがいる人がひとりいるかいないかの社会において、赤子が生まれるという喜びに、多少なりとも飢えていたのだ。
なにより、女性たちが『CUNAE』を求めた。
社会的には子どもを産みたくないが、人間であり女であるという本能の部分では子どもが欲しい。その矛盾が解消される。食いついても仕方のないことである。
出産経験者すら、生みの苦しみはしないでいいならしたくない、という内心があったと予想される。
『CUNAE』で生まれる子どもが、徐々に増えていった。
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