ビーナス

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ビーナス

「ビーナスは今、流行(はや)りのキラキラネームなのじゃ。グワッカカカァ」  魔王は豪快に笑い飛ばした。 「はァ古ゥ。キラキラネームなんてもう絶望的に流行(はや)ってねえェよ。いつの時代の話しだよ。平成かァ?」 「グワァッカカッ、どうじゃ気に入ったじゃろう?」 「ぬうゥ、だから私の話しを聞いてるのか。気に入っているワケがないじゃん。今すぐにでも改名したいくらいだよ」 「カッカカッ可愛らしいビーナスにピッタリの名前じゃ」  しかし愛娘のクレームなど聞くような魔王ではない。 「はァ、なに言ってんだよ。恥ずかしいって言ってるだろう。だいたいなんで魔王の娘がビーナスなんだよ」 「カッカカッ、そんなのは魔王の気まぐれじゃ」 「どんな気まぐれだよ。つけられた娘の気持ちにもなれよ。特撮モンのヒロインか。学校じゃァ白い目で見られるだろう」 「カッカカ、そんじょそこらにはない名前じゃァ文句はないじゃろう!」 「はァ、文句大ありだよ。そんじょそこらにビーナスなんて珍妙な名前の女子が居てたまるか。世界でビーナス・ウ○リアムズと私しか居ねえよ」 「クワッカカッ、大丈夫じゃァ、ビーナスなんてちょっと探せば必ずどこかに(ひそ)んでおるモノじゃ」 「はァ、どこにだよ?」 「ほらァそこのキッチンのゴミ箱の裏とかにな」 「それは、ゴキブリだろう。何と一緒にしてんだよ。可愛い娘なんだろう!」 「そうじゃァ、だいたいビーナスなんて、ひとり()れば周りに三十人くらい(ひそ)んでおるモノじゃ」 「だからゴキブリだろうがァ。それは!」
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