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お笑い芸人に
「そこでじゃ、このたび吾輩はお笑い芸人としてデビューすることに決めたんじゃァ!」
「えッえ、え、えェ……、なにそれェッ。誰が決めたんだよ?」
思わずビーナスは聞き返した。
「もちろんこの吾輩だ!」
「え……?」
「吾輩は、かねてからの夢であるお笑い芸人になるんじゃ」
魔王は決意したように拳を握りしめた。
「な、マジか……?」
「ああァ、やらずに後悔するよりもやって後悔することにしたんじゃァ!」
「そりゃァ、前向きなのはわかるけど……」
魔界の魔王が人間界で、お笑い芸人になるなんて前代未聞だ。
「吾輩は今、猛烈に燃えているんじゃァ。人間界イチの芸人となって世界じゅうの子どもたちを笑顔にする。それがこの魔王としての夢なんじゃァ!」
「いやいや、なんだその選挙演説は。どこの村会議員選挙に立候補する気だよ。アンゴラ村長か?」
「いつしか吾輩の愛するマイやんが恋い焦がれるような素敵な芸人になりたいんじゃァ」
「どこに向かってんだよ。なにが恋い焦がれるマイやんだ。結局、芸人になって、若い後妻の関心を惹きたいだけだろう」
「そこでじゃァ、まず手始めに関東ローカル系列で開催されるプロアマオープンの新人漫才師によるローカル-ワン。略してローワンに出場し制覇するんじゃァ!」
魔王はビーナスの目の前にローカル-1のポスターを披露した。
「はァ、なんだそりゃァ?」
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