しあわせたまご

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コツコツとお金も貯めて、やがて他の養鶏場のように、ケージ(効率的に産卵させる鶏舎)を設置することができた。 ケージを導入すると、作業もうんと効率的で、鶏の数を増やすことができた。 「やっぱりケージを入れたら、立派な養鶏場になった気がするなあ。社長になった気分や」 従業員も少しずつ雇うようになった。 そして日はめぐり、啓二は結婚し、息子啓介が生まれた。 啓介が幼稚園に行くようになった頃、妻のサチがパンフレットを見せながら話しだした。 「ねえ、お父さん、この頃不動産屋がアパート作らないかって盛んに進めるのよ。 土地もまだ空いてるし、やってみない」 「アパート?」 「この辺、国立公園になったやん?そんで観光パークも出来たし、それに県立の職業訓練大学いうのも出来たやろ?そやからこの町の人口も増えてるんやて。借家が足りへんのやて」 「けど俺、そんなことまで手がまわらんわ」 「建てたら、大して手間はかからんもの。私やってみたいわ」 「建てるには大金がいるやろが」 「ローン組んだら家賃で返して行けるみたいよ。借り手は不動産屋が紹介してくれるそうやで」 「ふーん」 結局サチに押し切られてアパート2棟を建てることになった。 すぐに満室になり、手間も大してかからなかったサチは満足そうだった。 鶏の頭数は3000羽まで増やした。アパート経営も順調だった。 生活も安定してきたなと思っていたのだが・・・・・・。
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