しあわせたまご

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さて、啓二の長男啓介は、自宅から通える近隣の大学で経営学を学び、無事卒業した。 大学3年の時、親子でこんな会話があった。 「お前なんで背広なんて着とるんや?」 「就職の面接にいくんや」 「家でワシと一緒に鶏の世話しとったらええやんか」 「僕のやりたいように変えていいか?それやったら養鶏手伝ってもええけど」 「やりたいようにて、どないしたいんや」 「そら、ちゃんと経済的に成り立つようにせんと」 「あの、ロッカーみたいな檻でやりたいんか!」 「ロッカーかどうかはわからんけど、コスト、収益やら・・・なんにしても、仕事としてやるんやったら、なんぼ評判が良うても、とにかく採算があわんことには、話しにならんやないか」 しばらく沈黙の後、 「ワシは儲けるためにやってるんやない。 手塩に掛けて育てて、食べる人に喜んでもろてやなあ、ほんで一口食べたときにじわーと幸せを感じるタマゴを産んで欲しいんや」 「そんな少女趣味みたいなこと言うて・・・」 「もうええ。お前なんぞにワシの鶏、任せられんわ!どこなと就職してこい!」 という経緯を経て、啓介は神戸の企業に就職した。 仕事はそれなりにやりがいがあったが、さすがに自宅にいたときに比べて疲れるようになった。 社食がまずい!コンビニ弁当もまずい!たまに帰宅すると、メシがうまく、元気が回復する。
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