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殺人鬼くんのお話を頂きました(*´艸`*)
先日載せさせて頂いた
このイラストになんと
kanataさん
https://estar.jp/users/1157732041がストーリーを付けて下さいました✨✨
ふふふ、実は先日kanataさんのエッセイで1000☆のキリ番を踏み抜いてきたのですよ(-ω☆)キラリ
コトコト煮込んで煮詰まって
https://estar.jp/novels/26156059
普段はリアルな少し切なくほろ苦いお話を書かれるkanataさん、エッセイも様々な見方があったり、とても素敵なんです(*´艸`*)
一人で楽しむには勿体ないので、是非下記からご覧ください。
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「ボクの言った通りやったら上手くいったでしょ?」
「……はい」
鷹揚な態度の青年に、傅く初老の男。
彼は青年の父親だった。
場所は地下のとある部屋、カーテンもビリビリに破れ周りには廃材などが転がっているが、青年が座る木箱は王座のように見えた。
周りから「殺人鬼」と呼ばれ恐れられている青年は腕も良ければ頭もキレる。その父親も裏社会ではある程度の権力者だ。しかしその才能は凡庸で、青年の足元にも及ばない。
今回の「案件」も途中から上手く事が運ばなくなり、青年に指示を仰いでいたのだ。その「案件」が終わり、彼は報酬を渡しに来ていた。
「勘違いしないでね?アンタを助けた訳じゃないから」
頭上からかけられる言葉を聞きながら、父親は怒りに身を震わせた。
「……分かっています」
「何?そのナイフ?ボクを刺すつもり?」
心底おかしそうに青年は笑う。
父親はナイフを力強く握り締めた。
「面白い事考えるんだね、父さん」
青年は父親の顎下に爪先を当て、顔を上げさせた。
「……いい顔」
全身から怒気を発しながらも、父親は表情を押し殺し無言を貫く。
「知ってるよ。母さんを殺したボクに、復讐したいんでしょ?」
トン、と父親の顎を乗せていた爪先を蹴り上げると父親は後方に飛ばされた。その弾みで口の端が切れ、手の甲で拭う。
「全部、知ってる」
青年は薄ら笑いを浮かべた。
「アンタにボクは殺せない。ボクにとってアンタは道端の石ころ同然なんだ」
青年は木箱から立ち上がり父親に近付く。父親は尻もちをついた状態でジリジリと後退した。
「アンタはボクが殺す。それまでは死なせないよ。利用価値がある内はね…守ってあげる」
―アンタだけは、絶対に他のヤツに殺させない
笑っていた青年の顔が一瞬だけ
歪んだ。
彼は知っていた。
父親が母親を愛していなかった事を。利用するだけ利用し、自分を孕ませ捨て置いた事を。だから彼女は成長した青年に懇願したのだ。「私を殺してくれ」と。それが一番のアイツ《父親》に対する復讐になるからと。
青年が初めて手をかけたのは、母親だった。
それ以来、何人もの人間を消してきたが、皆道端の石ころ程度にしか思えなかった。
父親は愛する妻を殺され復讐鬼と化した演技をしているが、その実、都合の悪い青年の存在を消したいだけなのだ。
父親は青年をにらみ上げると懐から報酬を出し、目の前に放おった。
「困ったら何時でもおいで」
青年は再び口元に笑みを浮かべる。父親は小さく舌打ちすると立ち上がり、踵を返した。
闇に消えていく背中を見詰め青年は呟いた。
―待っててね、母さん…
おわり
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