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こちらが黙っているのをいいことに、彼は饒舌に続けた。
「うち、男に限ってではあるけど逆縁は絶対にないって言われてるんだ。だから、もしかしたら兄貴が死んだのかもしれない」
話が予想外の方向に進んで、ぎょっとする。
「お兄さん、ご病気を患ってるとか?」
「いいや、今朝はぴんぴんしてた。でも、うちの男は突然死がやたらめったら多いから」
予兆があったわけではなかったか、と胸を撫で下ろす。
しかし彼は切なすぎることを、あまりにもあっさりと口にする。
境遇上仕方ないとはいえ、もっとこう、明るく前を向けないものだろうか。
「自分が人質になってるからって、元気なお兄さんを勝手に死んだことにしちゃ駄目だって。そもそも、その理論でいくならお兄さんが生きてる限り、久留米だって絶対に死なないってことじゃん」
この辺りからいよいよ「てめぇら何話してんだ」と言いたげな視線が四方八方から飛んできたわけだけれど、私はそんなこと気にしている余裕などなかった。
「とにかく死なないから。そうだ、撃たれそうになったら私が盾になってあげる」
「怖いこと言わないでよ。それに高遠さんだって必ず死なないわけじゃないでしょう」
勢いよくそう言った直後、久留米律の表情が露骨に強張った。
しまった、という後悔の念がそこに滲み出ている。
彼の素直さは決して悪ではないし、こちらに抱いている申し訳なさのようなものだって痛いほど伝わってきた。だったら、後は私が引き受けてあげなければならない。
「そうだね。お姉ちゃんは事故で死んじゃったしね」
「ごめん」
萎れながら謝罪され、こちらまでいたたまれなくなってしまう。
「謝らないでよ。事実なんだし、久留米の人なら知ってて当然じゃん。……でも、あれは例外中の例外だから。私は絶対にこんなところでは死なないよ。もちろん、久留米だって死なせない」
「……めちゃくちゃだよ」
肩を落としながらそう言う久留米律は、笑っているのにどこか寂しそうであった。
それからも私たちはしばらく「死ぬ」「死なない」「死ぬ」「死なせない」の押し問答を繰り広げた。それはあまりに堂々巡りであったため、結論をさっさと言ってしまおう。
私たちは、死ななかった。
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