水面の睡蓮

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本日、俺の高校生ライフに終止符が打たれる日。 過去のバカやってた日々が走馬灯のように駆け抜けてく日。 まぁ平たく言えば、卒業式。 「………はぁ………」 卒業式で泣く人がいる。 そりゃ悲しいけど、男は大概泣かない。 男は、"悲しい"ってことを無理矢理忘れるために、卒業式もバカやって、最後の最後まで友人達と笑うんだ。 で…大概の男はその日の夜、一人部屋の隅で泣くんだ。 「………はぁ…………」 そんな、人生でも重大なイベントである卒業式の日…式が終わってから俺はため息しか吐いてない。 その理由は── 「なんだよ、さっきからため息しか吐いてないなレンは。」 「分かるよ分かるよ~。同学年の友達との別れの悲しみがため息に変わったんだよね~。」 「卒業式の日にまでお前ら二人と絡んでる俺が情けなくてため息吐いてんだよ。」 卒業式後の、皆さんが各々に泣き笑い別れの時を惜しむような時間まで…俺は優や麗奈と一緒にいる。 俺達は校門前でただ突っ立つだけ。 ちなみに言わずとも周りには思い出に浸って泣いている生徒や、友との熱い友情を確かめ合ってる生徒や…まぁなんせ、かなりジメっとした空気の中にいる。 「そういえば、レンも麗奈も泣いてないな。」 「お前こそ泣いてないだろ。」 何故卒業式の日にコイツらと泣いた泣いてないの話をせにゃならんのだ、気持ち悪い。 対して、優はちょっと恥ずかし気に頬を掻く。 「はは…俺は式の時にちょっと泣いたからな。」 「ホントに!?優のほろ泣き見たかったぁ~っ!!」 そして、今日もこの今だに初々しいカップルは俺の目の前で堂々といちゃつく。 主に彼女のほうが積極的に。 あぁ嫌だ嫌だ、青春泣きなジメジメも嫌だけど馬鹿ップルのいちゃつきも湿度高ぇから嫌だ。 「でももう終わりか~。長かったね~。」 麗奈はしみじみとそう言い、三年間世話になった校舎を眺める。 …長かったかって聞かれると…短かった気がすんだけどな…言うても三年だけだし。 「…ホントに、長かったなぁ…。」 何故かやたらと麗奈が雰囲気を作り出した。 そんな長くはなかっただろ。 俺ら18歳なわけで、人生の6分の1程度の時間だろ? …いや、そう考えたらそこそこ長い、のか? …でも、麗奈のその瞳は、高校の3年間だけを振り返っているわけではなさそう。 「…レン、ちょっと俺サッカー部の後輩に顔見せに行ってくるよ。」 そして次は、何故かこのタイミングで優がそんなことを言い出す。 「なら俺も行くって。一応サッカー部だったし。」 「バカ、レンが来たらどうせ締まらないんだから止めろ。」 俺そんなにふざけたキャラだったかしら…。 優は立ち去る前に、横目で俺に目配せをする。 え?何それ?…と、惚けるほど俺も空気読めねぇ馬鹿じゃないわけで。 「……………。」 "それ"を任された気がする。 麗奈と俺だけを置いて行くって…コイツの彼氏はお前だろうが…。 彼氏さんのいらん気遣いに、またまたため息を吐く。 まぁ麗奈も優の意図を察したんだろう、あははと可笑しそうに笑っていた。 「あはは…本来なら退散役はレンだったのにね。」 「アイツはホントに、俺を信頼し過ぎだろ。」 まぁ…だから中学から長々と、俺の親友やってんだけどな。 こんなちゃらんぽらんで、飄々として、なーんにも生産性のない男なんかと。 アイツと親友でいられたのは、まぁこの人生で誇れるもんの一つだな。 そして…ここにはもう一人、小学生の頃から俺の幼なじみをやっていた女の子がいる。 「…長かったね。」 「…だな。」 ホントに…よくもまぁ、10年以上も俺の側にいてくれたもんだ。 あまりにも側にいるのが当たり前過ぎて…なぁ…。
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