最期の試練

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それから一時間近くが経ち、蒼が言っていたように俺は完全に回復。 若干体中ヘンな感覚がするが、まぁそれは気にしないでおこう。 時刻はもう日付が変わっていたが、俺も蒼も寝ようとは思わなかった。 俺はついさっきまで麻酔で寝てたから眠気がないのかもしれないが、蒼はそんなことないハズなのに…まぁ、なんだかんだで翠が心配なんだろうな。 …しかし、遅い。 一時間は覚悟していたが、それにしても翠の帰りが遅い。 俺と蒼は暇潰しにチェスという洒落たもんをして楽しんだが…しかし、遅い。 …そして、もういい加減心配になった俺達は、蒼のママさんの部屋まで様子を見に行くことになったんだが…その部屋に入るなり、俺達は物凄い脱力感に襲われた。 何故なら…翠とママさんが、アルバムを広げながら楽しそうにお喋りを繰り広げていたからだ。 多分、あれはママさんの昔の写真でも見ながら盛り上がってるんだろう。 なんて言うか、お前らはどこの女子高生かとツッコミたくなったが…この二人は俺達の入室にも気がついてない様子。 だから俺と蒼は…互いに笑いながら、この空気を壊さないよう退散することにしたのだった。 …なんだかんだで、呆気なかった。 あれだけウジウジ悩んでたクセに、話合えばもう仲良しになっていたとは。 拍子抜けするほど…幸せそうな家族が、そこに。 「あれが姉さんの凄いとこっスね。」 「いや、あのママさんもどうかしてると思うぞ俺は。」 切替が早過ぎるって言うか…まぁ良い事だから別にいいけど…。 元の部屋に帰り、俺も蒼も気の抜けた顔でベッドに腰掛ける。 「まぁ、一件落着ってことで。色々すみませんでしたね、蓮寺さん。」 「全くだ。お前が社長になった日にゃ慰謝料ぶんだくってやるから覚悟しとけ。」 そう言っても、あははと笑うだけの蒼。 いや、割とマジで言ってるよ俺? 有能そうなこのガキは普通ーに親から社長の座継ぎそうだし。 「それより…もし姉さんと蓮寺さんが結婚したら、僕は蓮寺さんの弟になるんですね。」 「俺はともかく、多分俺の妹にもお前は弟扱いされるな。」 美柑の弟が増えるとか、実質新しいオモチャの入荷みたいなもんだしな。 妹の話に、蒼は「あぁ」と声をあげる。 「あの蓮寺さんにそっくりな方ですか。いやぁ、流石の僕も初見は蓮寺さんと見間違えちゃいましたよ。」 「はっはっは、アイツと関わらなきゃならんくなるのは大変だぞぉ。翠をコントロールするのとは別の難易度があってだな、例えば──」 まだまだずっと先の話を、 俺達が家族になれる日の話を、 俺達も、どちらかが眠ってしまうまで…飽きることなく語り合っていた。  
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