みち、みち、みち。

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 ***  きさらぎ駅もそうなのだが。  こういう都市伝説系の話は、広まれば広まるほど尾ひれがついて回るものである。ようは、真実かどうかもわからない枝葉がついてくるということだ。  大体、この夢を見て祟りにあった人間が死ぬというのなら――その祟りの内容を知っている者なんているはずがないのである。それなのに、何故だかこの都市伝説の場合、祟りを受けてしまった人間は両足を根元から切断されて殺される、ということになっているのだ。  多分、似たようなホラー映画でも見て、影響された人がいたのだろう。腕や足を切断された死体、なるもののインパクトは大きい。祟りで人がそのように死んだら面白いとでも思ったのか。いやはや、なんとも不謹慎な奴らである。 ――ちょっとお。話のパターンがありすぎ。どれが本当かわかんないじゃないの!  暫く検索したところで、私はうんざりしてしまった。  この都市伝説が有名になってから少しばかり日数が過ぎていたようで、私も夢を見た、俺も見た、なんていう証言がわんさかと出て来たのである。一体どれが本当かわかったもんじゃない。しかも。 『どの道が正解かわからないので、黄色の道を進んでみることにしました!すると、金色にぴかぴか光る金属の洞窟のような場所に辿り着きました。天井からも壁からも鋭い棘のようなものが突き出していて恐ろしかったです。あれに触れたら殺されると思って、無我夢中で走り抜けました。そしたら、なんとか出口までたどり着いて助かることができたのです』 『一番怖いことが起きそうだったので、赤い道へ進んでみました。すると、次第に道はどんどん細くなり、平均台くらいの太さになってしまいました。しかも、両脇にはぐつぐつと煮えたぎる血の池地獄のようなものが広がっているんです。あれに落ちたらきっと死ぬだろうと思って、冷や汗をかきながら細い細い道をゆっくりと渡っていき、なんとか渡り切ったところで目が覚めました』 『俺は興味本位で黒い道を選択した。すると、どんどん周囲が暗くなってきて、ついには真っ暗で何も見えなくなってしまったんだ。でも、何かがじいっとこちらを見つめている気配がするし、何かが耳元でぼそぼそと喋っているような声もする。あれに捕まったらやばいことになると思って、全速力で走った。息が切れて倒れそうになったところで、気づいたら目が覚めていて朝が来ていた』  三つの道、どれを選んでみたという証言もあった。  しかし、普通に考えるのならば、どれかの道が正解で、残りの道は不正解であるはずである。三つのどれを選択しても生還した人の話、が出てくるのは正直おかしい。  恐らくは、誰かがウソをついているのだろう。  誤った道を通って、誰かが祟られて死体になるのを見て面白がりたい。きっとそういう人がいるということなのだと思われた。
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