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――マジ、人間終わってるわ。つか、これじゃほんと、どの道が正解かわかんないし。確かめる方法ないもんかねえ。
自分が夢を見て、実際に道を選択してみればおのずと答えは見えるのだろう。しかし、この夢は本当にランダムであるらしく、望んで見られるものではないという。私もまだギリギリ二十代なので“見る確率が高い年齢”には入っているが、それだけで夢を見させて貰えるほど簡単な話ではないのである。
大体、本当に夢を見たとして。その場合は、確実に正解の道を選んで帰らないと、死んでしまうことになるではないか。正直、そんなリスクは負いたくない。間違えているかもしれない選択なんてしたくもない。
こういう怪談は、安全圏から眺めるからこそ面白いのだ。自分で悪霊と戦いたいなんて願望、少なくとも私にはないのだから。
「ん?」
そんな時だ。
ネットにて、一つの書き込みが目に留まったのは。
341:名無しさんは百物語中@以下、こっくりさんがお送りいたします[sage] 2023/04/21(金) 23:15
都市伝説の夢見てるところなんだけど、まさかの夢の中から書き込みができてるなーう!
今、例の三叉路に立ってる!
誰か正解の道おせーて
「ぷっ」
とあるオカルト掲示板での書き込み。私は思わず吹き出してしまった。確かに、きさらぎ駅であったように“オカルト体験している人間が助けを求めて掲示板に書き込む”というのはテンプレートな流れだ。ホラー体験の実況を聞きながら、掲示板の人間と一緒に打開策を見つけていくというもの。確かに面白いといえば面白いが、流石にそろそろ流行遅れな気がしないでもない。
そもそも、普通の怪異に巻き込まれている時ならいざ知らず。夢の中からスマホで書き込みができています、なんてさすがに信憑性がなさすぎる。
案の定掲示板の住人達も、“釣り乙!”“いくらなんでもありえんわー”などの書き込みで盛り上がっていた。
そう、盛り上がってはいるのだ。作り話だろうと思いながらも、本当だったら面白いと思っている人間がたくさんいるがために。さながら書き込みは、チャットルームかと思うほどの速さで進んでいっているようだった。
――釣りでもなんでもいいから、面白いものが見たいのねみんな。まあ、私もそーだけど。
夢を見ている最中だという人間は、正解の道がわからないので掲示板の人達に教えてもらおうとしている。しかし、そもそも私が調べたように、この都市伝説の“正解”がどれなのかは諸説あって誰にもわからないのだ。
そのため、結局書き込みは“赤の道を行け”“いや黄色の道だ”“黒の道が面白そうだ”みたいいな無責任な書き込みであふれる結果となるのだった。まあ、誰も正解がわからないので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないが。
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