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学校って何をする場なんだろうか。1人の少年が高校通いながら考えた疑問である。たしかに仲間とのかけがえのない時間であることはたしかである。しかしこと学びに関していうと、書籍で調べれば大概のことは分かるし、現代なら動画やネットでリテラシーさえしっかりしていればかなり早い時間で問題解決に辿り着く。思い悩む彼の名は田中という。今のようなことを暇があれば窓から風景見ながら考えている。周りの生徒や教員もとくに不満もたれることはない。優等生とは言わないが手のかからない生徒だ。ただ良くも悪くも発達途上であるのに、子どもらしい感情がない。何を考えてるのか分からない。ある日転校生が田中の隣の席にくる。品があり、厳格に育てられたという印象を受ける名は黒田と言う。席に着く際田中を見て「よろしく」とひとこと。雰囲気が少し独特なので休み時間になっても、他の生徒話かけない。ただ田中は学校で育てている動物や植物に放課後黒田が優しく接していることもあり、関わりたいという感情があった。ある日、黒田が田中に言った。「君はかなり達観して学校生活過ごしているんだね。だけどそれだと傍観者で終わるよ。学園生活」田中は半分はうざいと感じたしかし、もう半分は核心をつかれたと感じた。放課後になるとまた黒田が話かけてきた。「気持ちは分からないではないよ。だけどせっかくの時間だから嫌じゃなかったら僕となにかしない?」
田中は少し戸惑ったが、「いいよ」そう言った。それから2人はスポーツからゲームから、はてはアダルトな雑誌を読んだり一緒の時間を過ごした。そうしているうちに田中は自然と笑みがこぼれるようになった。考えとしては、たしかに役にたつものではないかもしれない。でも黒田との日々、いや学校は楽しいと思った。しかし幸福な時間はそう長くは続かなかった。親の転勤で黒田はまた違う学校に転校してしまうのだ。田中は黒田に感謝の気持ちで「ありがとう」そう言った。すると黒田は「こちらこそ」と言い握手を求めてきた。2人は硬い握手を交わした。田中は学校っていいなと素直に考え出した。それから10年経ち田中は教員になった。そしてクラスにはかつての自分のような生徒がいる。田中は言った。「いいのかいまのままで」
時代は変わっても変わらない学校観が田中にはある。いつまでも。
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