奪われる思考

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奪われる思考

 親指で噛んでいる下唇を外してやると、俯いていたナオがそろりと顔をあげる。  蕩けた瞳は潤んで今にもこぼれおちそうだ。  半分だけ開けられた唇からは、濡れた赤い舌が覗いている。  今はなんとか理性を保てているけれど、体中が熱くなって眩暈までしてきた。  確か、発情期のヒートってやつは、性行為をすれば一旦は落ち着く…、だったよな?  そんなことを、この間ネットで読んだばっかりだった。  っつーか、こんなところで二日も三日も過ごせねえし…。  どうしたらいいんだ。  駄菓子屋のじいちゃんの話し、真面目に聞いときゃ良かった。  あのじいちゃん、チビの頃の俺らが行くたんびに、実は大事なこと教えようとしてくれてたんだな。  将来的に、俺らがこうなると思ってたんだろ。  下ネタじじいって、大人たちからは嫌われてたけど、めちゃくちゃ優しいじいちゃんだった。  そんで、そうだ。  …思い出した。  サンキュー、じいちゃん。  「ああでも。もう、」  せっかく、ヒントをつかんだのに。  この先の段取りを考えて、間違えないようにしたいのに、全然頭がまわってくれない。
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