「知ってたよ」

考え中

　そもそも俺はナオがΩだから好きになったわけじゃねえからなあ。
　っつーか…今まで発情期中のナオを抱いたこともねえし。

　それは、体の変化について行けない時や、番となり他のαを惹きつけてしまう性質を抑えると言う意味でも、なかなか頼ってもらえてない感じがしちまって、ちょっと寂しくもあったんだけど。

　って言うか、だからなんで？
　なんで未だに番になれって言ってくんねえんだ？隠してっから？嫌なの？まさかね。…まさか、だよな。

　そもそも俺が知っている限り、ナオは学校を一週間も休んだりしたことはない。サボる時はだいたい俺も一緒だし。

　なんつーか、ナオは見た目イイし、頭もイイし、性格は微妙って感じるやつもいるかもしんないけど、いや俺にとっては最高だけど、ともかく一見αだと思われることが多いと思う。

　色素の薄い肌は陶器みたいだし、襟足の長い脱色した髪は傷んではいるけど、睫毛や眉毛も茶色っぽいから似合ってる。
　鋭い目はエキゾチックな印象で、二重で切れ長だ。
　…いや、そらΩじゃなくても、男から狙われることあるんじゃね？みてえな気がしてきた。
　え？もうシタ方がよくね？ツガイになるべきじゃねえの？ダメなの？なんでナイショなわけ？

　うーん。薬で無理をしてるってことか？それにしたってセックスは？
　Ωは妊娠の心配だってあるらしいじゃん。
　それなのに普通に俺と部屋で会うたび毎回してっけど。
　これも後でこっそり薬を飲んでるっつーこと？

　なぁ、ナオ。
　俺の知らないとこで、辛い想いしてねえよな。
　やだよ、そんなん。

―　きいてしまおうか。と、思ったことは何度もあったんだけど。