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リベンジ
どうしよう、と思っていると、冴木は深々と息を吐いた。こいこいと手で桃野を呼び寄せ、ベッドに座る自分の上に乗せる。
――えっ、えっ。
と戸惑っていると、冴木は予想外のことを告げる。
――すみません。昨日は余裕が無くて、丁寧にしてあげられませんでした。桃野さん、痛がってたでしょう? 今度は、ちゃんとよくしてあげます。
――えっ、するの? これから?
――もちろんです。リベンジさせて下さい。
冴木の黒い瞳がきらりと光った。彼は桃野の目尻に浮かんだ涙を、ちゅっと吸い取った。
――わっ、待って……。
――待てません。俺、今けっこう我慢してるんで。
冴木が桃野の耳たぶにキスをしたせいで、話はうやむやになってしまった。
宣言通り、冴木は今度は桃野を優しく扱った。後孔を充分解しながら、桃野の肉茎を揉んで、何回も出させた。乳首まで愛撫をし、桃野がもういやと根を上げるまで泣かせた後、自身のたくましい男根で、とろけた蕾{つぼみ}を征服した。
――あっ……あ、あ……待って、待って……っ。
桃野は今度は快感に涙をこぼした。昨晩とは打って変わり、冴木の責め苦は甘い。いとも簡単に桃野は愉悦に溺れた。
――……っ、やっぱ桃野さんって、ヤりなれてるんですね。昨日は処女かと思うくらいぎこちなかったけど、でも今日はめちゃくちゃ感じてますね……。上手いです。俺達、相性いいかもしれませんね……。あんたの中、せまいし、熱いし、ぎゅうぎゅう締めつけてきて……すぐイきそう。昨日みたいに……。
冴木は額に汗を浮かべて、切なげに言った。桃野はその表情を見て、嬉しすぎて今死んでもいい、とすら思った。
……ヤりなれてると勘違いしてるみたいだけど、そっちの方が好都合だ。冴木くんが喜んでくれれば、ぼくはビッチでいいや……。
桃野は喘ぎながら、そう思った。
冴木とのセックスは、相手が若いせいか、なかなか終わらなかった。自慰すらしたことのない、性に淡白な桃野は、昼過ぎに、ようやく解放してもらえた。
彼はやることが終わると、さっさと帰ってしまった。
……すごい半日だった……。冴木くん、絶倫ってやつだ……。
桃野はうっとり半分、羞恥半分だった。相性がいい、というのは本当だと思えた。
……でも、もう逢えないよね。約束もしなかったし……。
と思うと、胸がチクリと痛んだ。
期待はしていない。連絡先は交換したけれど、桃野は彼からラインが入るとは思っていなかった。
しかし翌週、意外にも冴木はラインを送ってきた。それは毎週金曜日、週に一度の逢瀬の誘いだった。
桃野は驚きと、喜びと、罪悪感が混ざった複雑な気持ちだった。がしかし歪{いびつ}な関係でも、冴木と繋がっていられる、その嬉しさが勝っていた。
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