朱に染まる禁断の華〜悪役令嬢である私が、冷酷な王子様に断罪されなかった理由〜

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「オリヴィア。このダンスが終われば、私たちの関係もそれまでとなる」  月に一度、王城で行われている夜会(パーティ)。  天井より吊るされしは絢爛(けんらん)たるシャンデリア。テーブルには豪華な食事や美酒が一面に並び、意中の紳士と踊る令嬢は喜びに顔を(ほころ)ばせている。  誰にとっても楽しい夜――そのはずだった。  たった今、この国の王子様が断罪ショーの幕を上げるまでは。 「アルフィ様? 突然なにを(おっしゃ)るので……?」 「巧妙に偽装してあったが、君の犯した罪の証拠はすでにこちらで(つか)んでいる。(さと)い君ならば……これがどういう状況なのか分かるよね?」  感情のない、淡々とした声。  ダンスホールで婚約者であるアルフィ王子と踊っていたオリヴィアは、豹変したパートナーの態度に驚き、思わずその足を止めた。 「さぁ、ダンスはもう十分だろう。婚約破棄の手続きは事前に済ませておいた。あとは牢屋の中でゆっくりと休むと良い」 「そんな!! 突然なにを……私は罪など犯していません!!」  しかし彼女の言葉は彼にはもう届かない。  どこからともなく武装した兵が現れ、オリヴィアを拘束し始める。 「心からお(した)いしておりましたのに……まさか、見せしめのために私をここへ呼んだのですか!! 放しなさい貴方たちっ、私を誰だと思っているのですか!!」  アルフィ王子は彼女を視界にすら入れず、無言のまま手で兵たちに「連れて行け」と合図する。  必死の抵抗も空しく。怨嗟の言葉を吐きながら、オリヴィアは会場の外へと退場させられていった。  こうしてこの日、華やかなステージで一人の少女が断罪された。  次期王妃という輝かしい将来への道を閉ざしたのは、この国の王太子であるアルフィ王子。  表情を一切変えず断罪するその姿から『仮面の王』と恐れられる、とても冷酷な王子様だった。
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