もうすぐ

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もうすぐ

 ……もうすぐだ。もうすぐ、彼女にまた会える。    ガタンゴトンと線路に乗せて刻まれる音は、まるで僕の心臓が鳴っているようかのに大きく響いて耳に届く。それほどに僕は緊張していた。    少しずつ近くなる目的地。あとふた駅、あとひと駅と数えながら、落ち着きなく窓の外に広がる景色をきょろきょろと見回す。これが、彼女がいつも見ている景色かもしれないと思うと、まるで今もとなりに彼女がいるように感じて嬉しくなる。 『あの辺りがわたしの家なの』、『ほら、海が見える。とてもきれいでしょう?』。もしも本当にとなりにいたなら、そんな風に話すだろうか。うん、きっとそうだろう。いつものあの穏やかな笑みで、僕を見るんだ。  もうすぐその笑みに会えると思うと、つい口元が緩んでしまう。だけど窓に映る締まりのない自分の顔に冷静さを取り戻して、口元をきゅっと引き締めた。    もうすぐだよ、佳乃。
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