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 電車が止まり、僕はホームに降りた。すぅっと吸い込む息の中に、佳乃を感じる。だけどこれだけじゃ足りなくて、佳乃が足りなくて、僕は改札を出る。あらかじめ地図で見ていた道のりを行く。この道の先に彼女がいると思うと、つい足が速くなる。もつれそうになるそれを抑えて、走り出しそうになるのを我慢して、僕は歩いた。ふわふわと浮き上がる心地で、佳乃を思いながら歩いた。    もうすぐだよ、佳乃。    君は僕と会えて何て言うかな。どんな顔をするだろう。    あぁ、楽しみだね。佳乃。      やがて小さなアパートに辿り着いた。ここに佳乃がいる。期待に膨らむ胸の内を抑え、扉を見つめる。ベルを鳴らして彼女が出てくるのを待つ。きっと僕を見ると驚くだろう。黙っていなくなったことを謝るだろうか。そんなこと、もういいのに。大丈夫、僕は怒ってなんかいないから。そう言ってあげよう。    扉の向こうでカタンと物音が聞こえた。    僕だよ、佳乃。
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