さようなら玲香先生

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同じ医療従事者ではあるが、ここはまったく景色の違う世界だ。 栄台総合病院のオペ室の中では、常に怜陽が中心でチームが動いていく。 でも、ここでは、まったく何の役にも立たない。 ただ……。ただ、無事に、産まれて来てくれるのを願うことしか出来なかった。 「レオくん……」 「玲奈、頑張って」 「うん」 玲奈の可愛らしい顔が歪み、苦痛に悲鳴を上げる。 怜陽はただ……。ただひたすら祈り続けた。 とても長く、長く、長く感じられる時間が過ぎたとき……。 「玲奈頭が出たわよ。もうちょっとよ、頑張って!」 義母のひと際大きな声が分娩室に響いた。 その直後、赤ん坊の泣き声がこだまする。 「玲奈」 「レオくん」 玲奈の目に涙が浮かんでいた。
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