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莉子はまた、俺の前から姿を消すために念入りに計画を立てていた。
こども園も知らないうちに退園手続きをしていた。
「莉子、逃げても無駄だ!!地の果てまで探しに行く!!」
同じ都内に住んでいたのに、4年半、莉子と擦れ違う事はなかった。
元々引きこもり気質な莉子。
食料品や日用品は全てネットスーパー、Amazan、快天で購入していた。
在宅勤務な仕事柄、翔真くんのこども園への送り迎え以外は家から出なかったのだろう。
「……翔琉さん、凄い疑問なんですけど、なんで莉子さんに捨てられたんですか?」
「……俺が知りたい」
莉子と俺は同棲していた。
高専3年の時に両親が事故死し、孤独になった彼女を俺が引き取るように家に連れ込み、一緒に暮らすようになった。
莉子は祖父母も亡くなっていて、頼る親戚もいなかった。
莉子とはソミーでのバイトで出会い7年間付き合っていた。
高専1年の莉子と大学1年だった俺。
莉子が高専専科を卒業したら結婚すると約束を交わしていた。
「翔琉さんの強引さが嫌だったんじゃないですか?」
「……」
当時は相思相愛で強引な事は一切していない。
だから、莉子が俺を拒絶する理由がわからない。
「西原、莉子を俺の前に連れてこい」
「それ、……秘書の仕事ですか?」
西原がぶつくさ言いながらスマホを取り出し、莉子が配属されてるプロジェクトチームリーダーに電話をかけた。
クライアント先に退職の挨拶するよう日時指定で誘き出し、拉致る罠を張った。
莉子を2度と手放したくない。
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