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 昨夜も、今朝も、どうにか清瀬さんを必要最低限にやり過ごし、あたしは、そそくさと支度を終え、すぐに会社に向かった。  今日は、父親も通常仕様だったので、清瀬さんは、一緒に出勤していくようだ。  あたしも、さすがに、連チャンで送迎はキツイので助かった。  そして、会社に着くと、いつものように、すれ違う人達と挨拶を交わしながら、総務部に向かい、荷物を置く。 「おはよう、佐水さん。何か、さっき、二階が妙に騒がしかったけど――聞いてる?」  すると、長島さんが、あたしを見やりそう尋ねたが、心当たりは何も無い。 「え?……いえ、何も」  キョトンとして答えると、彼女は、思案顔を見せた後、言った。 「……何か、トラブルでもあったかしら」 「――……とにかく、営業部行ってきます」 「ええ、頑張ってね」  長島さんにうなづき返し、あたしは部屋を出て、階段を下りる。  そして、ドアを開け、 「――おはようございます……」  こっそりと、そう挨拶をしながら入っていくと、加治主任が慌てたようにやってきた。 「おはようござい……「佐水さん、昨日、キヨマルの追加発注分、発送したわよね?!」  あたしは、目を丸くしながらも、うなづいた。  確か、昨日の最後の仕事だ。  追加で三種類。商品番号も、数も、チェックしてもらった。  そう返すと、彼女は、青い顔で、首を振った。 「中身は問題じゃないの!――発送先、本社の第一センターに送ったでしょ!あれ、東京の第一センター宛てなのよ!」 「――え」  瞬間、全身の血の気が引いた。 「キヨマル、流通センターの名前、紛らわしいのがいくつかあるのよ。同じ第一でも、”流通”がつくのは東京なの」 「すっ……すみません……っ……!」  ――どうして、気づかなかった⁉  中身のチェックに気を取られて、宛先まで気が回らなかったなんて、言い訳でしかない。  あたしは、青くなったまま、加治主任を見上げた。  すると、彼女も同じような表情で言う。 「朝一番で、キヨマルの方から連絡があって――東京宛ての伝票が入ってるって検品の時に気がついたんですって」  あたしは、口を両手で覆う。  息が上手くできない。 「それで、今、向こうの担当に聞いたら、追加分は全部、関東の方で欠品してる商品だって。週末の分、当て込んで発注したって言ってたのよ」  ――昨日のうちに、東京行きのトラックは出ている。  他のトラックも、もう、朝一番に出払った。  次に戻って来るのは、早くても昼前だ。 「今、部長に指示仰いでるんだけど――何せ、キヨマルなんて全国区、大口も良いトコでしょ。担当者に、納品は来週でも構わないって言われても、数も大量だし、信用問題なのよね」 「……す……みませ……」  涙目になりそうなのを必死でこらえながら、あたしは、頭を下げた。 「おい!今から、キヨマル第一流通センター行けるヤツ、いるか⁉」  すると、電話を終えた部長が、部屋中に響き渡る声で言った。  ざわついていた部屋が、一瞬で静まり返る。 「向こうさんは来週でもと言ってるが、そういう訳にもいかない!融通利くヤツいないか!」 「自分、行けます」  手を上げたのは――竹森くんだった。
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