伝説が始まるんじゃァ

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伝説が始まるんじゃァ

 やがて、魔王とビーナスは横浜市中区の繁華街にあるテレビ関東本社ビルの前に着いた。  駅からの道すがら、通行人たちは魔王の姿を見て驚いていた。 「わァ、何アレ。ちょーウケるゥ!」  すれ違う女子高生たちもスマホで盗み撮りをしていた。 「グワッカカッ吾輩は魔王じゃ」  女子高生たちにチヤホヤされ、気を良くした魔王は胸を張ってポーズを取っている。 「ぬうゥ……」  娘のビーナスも頭が痛いところだ。  魔王は関東テレビ本社ビルを見上げ肩をすくめた。 「おお、ここか。噂に聞く日本一小さくてテレビ関東の本社ビルは?」  魔王は軽くバカにして笑ってみせた。 「知るかよ。小さくてボロいか、なんて」  さすがに反抗期真っ只中のビーナスも眉をひそめた。 「まァ良い。ビーナス。お前は心配せんでも吾輩にすべて任せておけ」  魔王は優しくポンポンと愛娘の背中を叩いた。 「はァ触るなよ。勝手に。ジジーに任せたら余計、心配だろうが」  まるで父親を毛虫のように嫌って身体を揺すった。 「ここから吾輩とビーナスの伝説が始まるんじゃァ。グワッカカカァ」  魔王の高笑いが横浜のオフィス街に響いた。 「ドラクエか。どんなんだよ。魔王がお笑い芸人になる伝説ッて?」  ビーナスは呆れた顔で嘆いた。  こうして魔王とビーナス親娘(おやこ)二人の伝説の幕が切って落とされた。      
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