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銀河鉄道
「ッで、吾輩のドラゴンはどこじゃァ?」
また魔王はキョロキョロと周辺を見回した。
「え、ドラゴンッて、なに言ってるの?」
娘のビーナスは眉をひそませた。
「ねえェねえェ、ママ、何あの人?」
「変なカッコォ」
公園にいる子供たちは魔王に興味津々だ。近寄ってマントを触りにきた。
「ほらァダメよ。マントを触っちゃ。危ないから離れて」
保護者の母親も対応に苦慮していた。
「わァーん。怖いよォ」
中には泣いている小さな子もいた。
「泣かないの。平気だからね」
お母さんも大わらわだ。
「フフゥン、移動にはドラゴンを使うんじゃろう。吾輩の専用のドラゴンは呼んだのか?」
「はァ、なに言ってんだよ。移動にドラゴンなんか呼ぶなァ。人間界だぞォ!」
「なんじゃァ、ハイヤーか。吾輩は狭いハイヤーは苦手なんじゃァ」
「電車だよ。電車移動が一番、時間にピッタリだろう」
「電車だとォ。はっはァン、そういえば吾輩も百年以上むかしによく銀河鉄道で移動したモノじゃ」
「あるかァ。銀河鉄道なんて。999か宮沢賢治の世界でしかないだろうッ!」
「構わん。なんじゃ、手を上げると銀河鉄道が、ここに来るのか?」
サッと手を上げた。
「来ねえェよ。公園のど真ん中に銀河鉄道なんか。タクシーじゃねえェんだから」
ビーナスも大慌てだ。
「吾輩は魔王だぞ。電車移動など出来るか。馬車を持って参れ」
「どこのワガママな暴れん坊将軍だよ。馬車なんか用意できるか。いいから来なさいよ。世話が焼けるわねェ」
ビーナスは、無理やり魔王の腕を引っ張り駅の改札へ連れて行った。
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