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ワープ装置か
魔王は駅の改札口の前に佇んだ。
「むッむむゥ……」怖い顔で唸っていた。
「えェッ?」
通行人のサラリーマンたちは一瞬、ギョッとして魔王を振り返った。改札口に並ぶ魔王は場違いで、なんとも違和感のある光景だ。
眉をひそませ魔王は改札口を睨んだ。
「ううゥン、なんじゃァ、この奇っ怪な装置は?」
「え、それは改札だろ。ただの……」
仕方なくビーナスはカードを渡そうとした。
「ほほォーッ、なんじゃ、これが噂の新型のワープ装置か。どうやって操作するんじゃ」
「あるかァ。噂のワープ装置なんか。なんのSF特撮ドラマだよ。ス○ー・トレックか」
「カッカカァ、人間界も便利になったのォ。これに乗って行き先を入力すれば、好きなトコへ行けるのか?」
「行けるわけねえェだろ。だからワープなんか出来ないって。ほらァSUICAだよ」
ビーナスはカードを渡そうとした。
「ぬうゥ、スイカは丸くて緑と黒の柄のくだものじゃろう」
「そのスイカじゃねえェよ。だいたいスイカは野菜だし。ここにカードを乗せるんだよ」
手本を示した。ビーナスはスマホを乗せるとホームゲートがスゥッと開いた。
「ほォ、面白い。ッで、いつワープするんじゃ?」
「しねえェよ。ワープなんて、ドラ○もんじゃねえェんだから」
「なんじゃァ、つまらん」
こうして魔王はブツブツ文句を言いながらもビーナスの後ろからついてきた。
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