11人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
ピッ・ピッ・ピッ・ピッ
静かだけど忙しなく動き回る音に、目が覚めた。あれ。またこの部屋。
「あ、気がつきました?」
「お名前言えますか?」
——あれ? 名前なんだっけ?
「あなたは、田中由美さん。た・な・か・ゆ・
みさんよ」
——あれ? そんな名前だっけ? 由美は、うん。私の名前。三島由美だ。あ、違う。結婚したんだ。
ボールペンのお尻であちこち突かれた。
——痛いってば。
手足を、動かしてみる。
右手と右足、はちょっと痺れてるけど、動く。左の手足は普通に動く。
もう少し速く、動かしてみる。
——これなら、見た目判らないかな。ま、元々不器用だしね、お箸持てれば良いかぁ。
そんな事を考えていると。
「あなたは、病室で脳梗塞を起こしたの。幸
い……」
看護師さんの話は続く。
どうやら、肺炎で入院中に脳梗塞を起こしたみたい。
幸い、院内だったので処置も早く、大きな麻痺は無さそうかな。
でも、ホントは知ってる。お祖母ちゃんが押し返してくれたから、帰れたんだ。
——お祖母ちゃん。ありがとう。膨れてごめんなさい。
最初のコメントを投稿しよう!