ありがとう

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 ピッ・ピッ・ピッ・ピッ  静かだけど忙しなく動き回る音に、目が覚めた。あれ。またこの部屋。 「あ、気がつきました?」 「お名前言えますか?」 ——あれ? 名前なんだっけ? 「あなたは、田中由美さん。た・な・か・ゆ・  みさんよ」 ——あれ? そんな名前だっけ? 由美は、うん。私の名前。三島由美だ。あ、違う。結婚したんだ。  ボールペンのお尻であちこち突かれた。 ——痛いってば。  手足を、動かしてみる。  右手と右足、はちょっと痺れてるけど、動く。左の手足は普通に動く。  もう少し速く、動かしてみる。 ——これなら、見た目判らないかな。ま、元々不器用だしね、お箸持てれば良いかぁ。  そんな事を考えていると。 「あなたは、病室で脳梗塞を起こしたの。幸  い……」  看護師さんの話は続く。  どうやら、肺炎で入院中に脳梗塞を起こしたみたい。  幸い、院内だったので処置も早く、大きな麻痺は無さそうかな。  でも、ホントは知ってる。お祖母ちゃんが押し返してくれたから、帰れたんだ。 ——お祖母ちゃん。ありがとう。膨れてごめんなさい。
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