第一話 開戦

1/8
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

第一話 開戦

鎧を纏い武器を持った天使達が規則正しく並び、一糸乱れぬ足取りで歩を進める。数えるのが馬鹿馬鹿しくなるほどの天使達が、突如一斉に足を止めた。それを見たラジエルは、隣にいる鎧を纏った天使に声をかけた。 「……ミカエル様」 名を呼ばれたミカエルは静かに頷き、天使達の前に出る。ミカエルのそばには、かの有名な大天使ガブリエル、ラファエル、ウリエルが控えている。 「皆の者、よくぞ集ってくれた」 大声を上げ叫んでいる訳でもないが、その声はその場にいる全ての天使に聞こえていた。 「いよいよ、地獄との戦いが始まる。頭領はかつて主に反し、自らが神になって代わろうとした堕天使。此度の戦いの開戦を自ら宣言した大魔王ルシファーだ」 その名前を聞いて表情が強ばる者もいれば、怒りから眉間にしわを寄せる者もいた。 「奴らの非道な手段により、多くの天使達と愛する人間達がその手にかけられた。卑怯な手段は悪魔にとっては正しいことだろう」 ミカエルはそこまで言うと一度言葉を切り、歯噛みして声を荒らげた。 「だが! 主はこのことを許しはしないだろう! 多くの同胞を葬り、人間達を道具として扱う悪魔達を、主に歯向かう大魔王ルシファーを、私は赦しはしない!!」 ミカエルの声に、天使達は歓声と雄叫びを上げた。  メイスを手にし、筋骨隆々とした身に鎧を纏った大天使ウリエルが一歩前に出る。 「問おう! お前達の剣は何のために!」 天使達は叫ぶ。 「悪しきものを罰し、倒すために!!」 大弓と矢筒を背負い、細身に軽鎧を纏った大天使ラファエルが一歩前に出る。 「問おう! 君達の盾は何のために!」 天使達は叫ぶ。 「正しきもの、そして主の威光を守るために!!」 女性の体に鎧を纏い、槍を手にする大天使ガブリエルが一歩前に出る。 「問いましょう! あなた達の意思は如何のように!」 天使達は叫ぶ。 「正義を貫き、偉大なる主のために!!」 ミカエルは剣を抜き、掲げた。 「悪を打ち倒す時、今こそ来たれり!!」 そう叫ぶと空間がねじ曲がり、地獄へと続く道が開けた。そこに次々と天使が突撃していった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!