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第一話 開戦
鎧を纏い武器を持った天使達が規則正しく並び、一糸乱れぬ足取りで歩を進める。数えるのが馬鹿馬鹿しくなるほどの天使達が、突如一斉に足を止めた。それを見たラジエルは、隣にいる鎧を纏った天使に声をかけた。
「……ミカエル様」
名を呼ばれたミカエルは静かに頷き、天使達の前に出る。ミカエルのそばには、かの有名な大天使ガブリエル、ラファエル、ウリエルが控えている。
「皆の者、よくぞ集ってくれた」
大声を上げ叫んでいる訳でもないが、その声はその場にいる全ての天使に聞こえていた。
「いよいよ、地獄との戦いが始まる。頭領はかつて主に反し、自らが神になって代わろうとした堕天使。此度の戦いの開戦を自ら宣言した大魔王ルシファーだ」
その名前を聞いて表情が強ばる者もいれば、怒りから眉間にしわを寄せる者もいた。
「奴らの非道な手段により、多くの天使達と愛する人間達がその手にかけられた。卑怯な手段は悪魔にとっては正しいことだろう」
ミカエルはそこまで言うと一度言葉を切り、歯噛みして声を荒らげた。
「だが! 主はこのことを許しはしないだろう! 多くの同胞を葬り、人間達を道具として扱う悪魔達を、主に歯向かう大魔王ルシファーを、私は赦しはしない!!」
ミカエルの声に、天使達は歓声と雄叫びを上げた。
メイスを手にし、筋骨隆々とした身に鎧を纏った大天使ウリエルが一歩前に出る。
「問おう! お前達の剣は何のために!」
天使達は叫ぶ。
「悪しきものを罰し、倒すために!!」
大弓と矢筒を背負い、細身に軽鎧を纏った大天使ラファエルが一歩前に出る。
「問おう! 君達の盾は何のために!」
天使達は叫ぶ。
「正しきもの、そして主の威光を守るために!!」
女性の体に鎧を纏い、槍を手にする大天使ガブリエルが一歩前に出る。
「問いましょう! あなた達の意思は如何のように!」
天使達は叫ぶ。
「正義を貫き、偉大なる主のために!!」
ミカエルは剣を抜き、掲げた。
「悪を打ち倒す時、今こそ来たれり!!」
そう叫ぶと空間がねじ曲がり、地獄へと続く道が開けた。そこに次々と天使が突撃していった。
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