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「ただ、やっぱり青臭いのは苦手だねぇ。私は少し刺激臭のある方が好きなんだ」
その言葉に、アムルタートは僅かに顔を顰める。
「……何か言いたいことでもあるんですか」
「いやあ、別に? それとも何か思い当たる節でもあったかい? 例えば自分の事とか……」
アムルタートはザリチュに向けて槍を振るい、ザリチュはそれを杖で受け止めた。
「やっぱり! あなたのそういうとこ! 私、ほんっと嫌いです!!」
「はっははは! いやあ申し訳ない、生まれつきこういう性格でねえ!」
「知ってます!」
アムルタートの振るう槍は決して未熟なものではない。アムシャ・スプンタの一員なだけあり、その力は確かなものだ。
そんなアムルタートに相対するザリチュも一筋縄ではいかない。ハルワタートの槍をかわしたり杖で受け流し、隙を見て魔術を打ち込む。
「大体! なんであなた方ダエーワの皆さんって挑発から入るんですか!? やっぱりアンリ・マンユに似たからですか!?」
「そうだねぇ、似てるつもりは微塵も無いが……っと! 親と子は悪いところばかり似るとか言うらしいからなァ。彼と親子のつもりは無いがね!」
ザリチュが杖でアムルタートを弾き飛ばすと、アムルタートは空中に放り出された。そこを狙ってザリチュは魔術で生成した火球を放つ。
「ただ全員挑発から入るのは違うね。タルウィやサルワ、アカ・マナフは違くないかい?」
アムルタートは空中で体を捻って体制を整え、槍で火球を防ぐ。
「そうですね、タルウィさんやアカ・マナフさん、サルワさんに関しては訂正します! けどドゥルジさんのはあれどうなんですか!? アシャさんにいっつも奇襲かけては挑発してますし!」
「アレは仕方ないさ。正義を司り正々堂々を好むアシャ・ワヒシュタと正反対の性質を持つなら、喧嘩をふっかけるのにあれぐらいはして当然だろう。まあ勝負自体はちゃんと対一でやってるのだし、大目に見てやりたまえよ」
地面に降り立ち、槍を大きく振るいながらアムルタートは言葉を返す。
「あなた方の同僚でしょう、何とかならないんですか!?」
槍を受け止め、ザリチュは呆れたような声音で言う。
「なるならなってるさ。そもそも、あれが彼女の本質でもあるんだ。変えるのは無理だよ。それに」
ザリチュはアムルタートの杖を弾き、後ろに退いた。
「本能のままに在る、そうしたいからそうする。それこそが悪魔の本質。キミも分かってるだろう?」
「っ、それなら……! どうして、今のあなた達は!!」
アムルタートは叫びながらザリチュに槍で切りかかった。
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