第二話 善と悪の軍団

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一方、反対方向ではその様子を二人の悪魔が見ていた。 「やっぱりアールマティに一掃されたわね。アイツ、戦いは嫌と言っているけれど、その実はこれだもの」 そう話す女性の姿をした悪魔は、クリーム色の長い髪を後ろで左右に分け、下でまとめている。身にまとっている、東洋の踊り子のような服が風に揺れた。 「貴女も大概ですよ、タローマティ。面倒と言っておきながら、そのアールマティと互角に戦えるんですから」 タローマティと呼ばれた悪魔は溜息をつき、怠そうに答えた。 「あたし達はそういうものでしょう。相対する者とは必ず互角になる。昔からそう決まってるじゃない」 その言葉にアカ・マナフは少し口角を上げた。 「皮肉なものですよね。正義は必ず勝つ、なんて言われてますが、善と悪は必ず互角になると決められているのですから」 「アンリが言ってたじゃない。結局は勝者が正義を名乗る資格を得るもんだ、って」 タローマティは肩をすくめた。 「悪の権化が、そんなこと言うんだから」 「そうですね。……では、一つ質問を」 アカ・マナフは目を細め、真剣な顔でタローマティに問いかけた。 「この戦争、現段階では誰なのでしょうか」 「……それ、正しくは、って話じゃないの」 「えぇ、まあ」 「そういうことなら、間違いなくルシファーね。天界は勿論、今のあたし達にとっても」 そう言って、タローマティは自分達の部下が争い、倒れていく光景を見る。 「では、その最も悪者として見られているルシファーに、敵……悪として見られている天界、そして神はどうなるのか。そう聞こうとしてたでしょ。……それこそ、よ」 その返答にアカ・マナフは苦笑いをする。 「全部答えられてしまいましたね」 「あのクソガキの歳の何倍もの付き合いよ? 分かって当然でしょ」 アカ・マナフは鉄扇で口元を隠しながら、陰惨な戦場に視線を移した。 「それもそうですね。付き合いに関しても、こんな事起こした上に、私達を捨て駒として扱うルシファーがクソガキだというのも、全て同感です。……ドゥルジやサルワ、ザリチュに仕事を増やされる方がマシな出来事が存在する、ということを教えてくれたことには感謝したいですがね」 アカ・マナフのわざとらしい言い方に、タローマティは怠そうに溜息をついた。 自分達のいる地点から西の、かなり離れた場所で起きた爆発には目もくれず、鳴り響いた轟音にも動じずに、二人は会話を続ける。 「そのドゥルジがあんなになってるんだもの。あんたがイラつかない訳ないでしょ」 「……出る前に言ったことを、覚えててくれるといいのですが」 「大丈夫よ。ドゥルジは戦闘狂だけど、馬鹿ではないのも知ってるでしょ」 アカ・マナフの、鉄扇を持つ手に力が入り、こめかみに青筋が立つ。 「そうですね……! 結果としては良くても彼女、やり過ぎるきらいがあるのも! えぇ、思い出すだけで胃が痛くなりそうなほど知ってます! あの若輩者(ルシファー)の歳の何倍もの年月も前から!! えぇ!! ああサルワもでした!!」 「(……地雷踏んだわね。まあこの後のことを考えると、感情的になってもらっておいた方が良いか)」 立て続けに仲間や同僚――勿論その中にはタローマティも含まれている――の愚痴を、怒りをぶちまけながら吐き続けるアカ・マナフの様子に、タローマティは半分呆れ、半分同情した。 「(なにより、こうなったアカ・マナフを止めたり慰めるのは面倒だしね)」
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