第三話 乱戦

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第三話 乱戦

各地、各層で激しい戦闘が繰り広げられる中、天使や悪魔に混じって、死の天使たちも既に第4層で戦闘を始めていた。 「そこ!」 隊員の一人が悪魔の首を大ぶりのナイフで切り落とす。どす黒い血が吹き出し、その場に崩れた。 「くそ、数が多い! 陽動っても、手に余るなんてもんじゃねえ!」 「とにかく先に行くんだ! 殺すなら乱戦だけど、アタシらの仕事は陽動や混乱させることだ!」 女性の隊員は大盾で複数の悪魔を薙ぎ払い、ドミエルの方を見る。 「ドミエル! サバオトとエラタオルは進めてるのかい!?」 自身を中心に衝撃波を発し、周囲の者を吹き飛ばしてドミエルはピアス型の通信機に指を当てた。 「サバオト、エラタオル。現在地の報告を」 全員の通信機越しに、サバオトとエラタオルの声と戦闘音が聞こえてきた。 「こちらサバオト! 今ようやく5層ら辺に着いた! 明らかに敵の質が上がってる、時間制限あるの考えると結構キツイぞこれ!」 「こちらエラタオル隊、私も5層ですが……彼ら、どうやら私達を分かっているようですわ。何度か狙われましたもの」 背後まで迫ってきていた悪魔を振り向きざまに切り裂き、ドミエルは会話を続ける。 「了解。現在の戦線をし、すぐにそちらへ向かう」 「あー、ああ、うん、ツッコミたいとこはあるけど助かる! 頼むぜ!」 「可能な限り進みますが、そちらも無理はなさらないでください!」 「ああ」 ドミエルはサバオトとエラタオルとの通信を切った。刀を納刀し、腰だめに刀を構える。 「……全員、下がれ。これより離脱する為、」 「げ……!」 「マジか、急げ!」 ドミエルと同じ戦場にいた隊員達はそれを聞た途端、急いでドミエルよりも後方へと移動した。 僅かに刀を抜いた瞬間、ドミエルの前方広範囲で、炎や氷、風、雷と斬撃、衝撃波が激しく荒れ狂う。見境ない攻撃は、天使も悪魔も関係無しにずたずたにした。  攻撃が止み、ドミエルは構えを解いて一つ息を吐く。後方の隊員達に向き直り、眉一つ動かさずに言った。 「行くぞ」 死の天使に入ってそれほど経っていない隊員は、眼前の光景に顔が引き攣っていたり、あからさまに恐怖する者もいた。一方、入って長い者はため息をついたり頭を抱えていたりしたが、全員が言った言葉は一致していた。 「……了解」 先程言っていた、離脱とは。隊員の何人かは、ドミエルに辞書を引いて欲しいと思った。
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