第四話 行進の歌

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第5層、西部、山岳地帯。サバオト達は襲いかかってきた悪魔を、声も上げさせず、的確に仕留めていた。  ふうと息を吐いて、サバオトは首をへし折った悪魔をその場に下ろした。それを見た隊員は身を震わせた。 「ドミエル隊長よりもサバオト隊長の方が隠密に向いてるっていうの、ようやく理解しました」 「血を流さずに仕留められるからな。よほど鼻が効いてないならまあ、まずバレないよ」 そう返す隊員は悪魔の口から手を離し、地面に置く。喉の傷口から血が溢れ出るのを見て、完全に仕留めたことを確認した。 「けど隊長、急がないとまずいですよ。ただでさえ俺らの目的地は、エラタオル隊長の隊より遠いって聞いてますし……」 「ああ、それなら大丈夫。こっから一気に進むからな」 そう言うとサバオトは、一人の女性隊員の方を見て頷く。彼女は何も言わず、黙って頷いて目的の方角とは真逆の方を向いた。 「よし。お前ら、行くぞ」 「……!!」 その意図を理解した隊員は目を見開き、自分達とは真逆の方を見ている女性隊員を睨んだ。 「お前、任務前に隊長と話してたのは……」 「早く行ってよ。あたしだって、ホントは恐いんだから」 そう答える女性隊員の口調は強いが、槍を握る手は震えている。 「……無茶すんなよ。お前、いっつも変に強がんだから。ヤバくなったら、逃げろよ」 「あんたに言われたかないわよ。そっちこそ、怪我してる時にいっつも見栄張って」 女性隊員は槍を一振りし、サバオト達に背中を向けた。 「それじゃあ、ここはあたしがやっときます。何が来ても絶対通さないんで」 「あぁ、頼むぜ」 サバオトは前に進むよう隊員達に促し、走り始めた。サバオトも他の隊員も、女性隊員も、背中を向けている方向を、ちらりとも見なかった。 「……隊長。これが終わったら、一発だけでいいです。本気で殴らせてください」 女性隊員と話していた隊員は静かに、しかし僅かに怒気を含めた声でサバオトに言った。 「……ああ。でも本当に一発だけな。この任務が終わったら、おれを殴りたいやつは他にもいるだろうから」
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