第五話 失敗から成功まで

2/5
前へ
/40ページ
次へ
サマエルにとってのかつて。別の世界で同じ聖戦が起きた時に早く戦いを終わらせようと直接コキュートスへ行った事がある。確かにルシファーを早く倒せはしたが、そこから崩壊が始まった。  アンリ・マンユとジャヒーの救出の失敗――『破壊の天使』による、2人の消滅(死亡)。それによるスプンタ・マンユの暴走、善と悪のバランスの崩壊。イブリースとその派閥が混乱している者を取り込み、そこからの聖戦第2回戦による天界の崩落。ルシファーの代わりに役割を果たす、別の獣の覚醒。 その失敗を経て次にアンリとジャヒーを救出してからコキュートスへ向かおうとしたが、サマエルは二人いるわけではない。ジャヒーを助けた直後、アンリが即座に処刑された。そして先程の崩壊のスタート。なんならジャヒーも暴走したため、より酷いことになった。  ならばとアンリを助けたら、ジャヒーが処刑され……こちらはもっと酷かった。アンリの暴走に引っ張られてスプンタも暴走したのだ。  ルシファーの起こした『二度目の聖戦』――その時のサマエルにとって、その世界では476回目の『二度目の聖戦』――で善の権化と悪の権化が暴走。そしてイブリースが漁夫の利を得て天使と悪魔を統率し、神の首を取って天界が崩壊。ルシファーが黙示録の獣となり……サマエルにとっては、今でも思い出すのさえ苦痛だ。  あの時は、悪の権化としての立場や役割を理解しているアンリならばジャヒーが死んでも大丈夫ではないかとタカをくくっていたのもあった。  ここでは詳細を省くが、鬱になり約一万年引きこもっていたのを元気づけて引っ張り出せたのがジャヒーであったこと、ジャヒーはアンリの分身でもあり妻でもあるが、娘であり母であり姉であり妹である、という女性としての面を権能として全て備えていたこと、アンリは意外と家族を大事にする事を何故忘れていたのか。サマエルはやり直した直後、近くの壁に頭を思いっきり打ち付けた。 死の天使に片方の救出を任せ、もう片方を自分が助けるという作戦を考えたこともあった。その時は作戦がバレて、死の天使が全滅した。勿論サバオト、エラタオル、ドミエルも死んだ。バレた理由は死の天使側の人員が多かったために動きが気付かれたのだ。双方の同時救出に失敗し、『破壊の天使』が漁夫の利を得て片方を殺し……というルートを辿った。  他にも色々実行したが、成功策は少ない。サマエルの考えでは、いくつかの条件を特定のタイミングでこなし、いくつかは同時に達成しなければならない。早くルシファーを倒せばいいってものでもなく……とにかく条件がシビアなのだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加