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「サマエル様、お疲れ様です」
ドミエルが声をかけてくる。その後ろにはサバオトとエラタオルもいる。
「しかし、生き残れとは……本気という事ですか」
「当然だ。相手が相手だしな」
サマエルの言葉に、サバオトがなんとも言えない顔をする。
「けど、向こうも一筋縄じゃいかないですよね? それにアンリさんとジャヒーさんもどこに捕まってるか……」
「ああ、それなら」
「それならオレが調べてきといたよ」
サバオトが振り向くと、いつの間にかフードを深く被った男が立っていた。
「お前、確かおれらに情報を渡してた……」
「ったく、無茶言うよねぇ。死ぬなっつっといて危ねぇことやらせんだからさ」
男は呆れたような声音で言い、フードの上から頭をかく。それを見てドミエルは腕を組んだ。
「その口調ならば、どこに捕まってるかは把握してるのだろうな」
「勿論よ。そうでなければオレ、ここにいないし?」
男はコートのポケットから端末を取りだし、地図を開く。
「地獄の第6層、ルシファー派閥の本拠地になってる万魔殿周辺。それを中心に、東西南北にそれぞれ砦や要塞がある。アンリ・マンユは北の砦の牢獄、ジャヒーは南の要塞にそれぞれ幽閉されてるそうだ」
エラタオルは地図を見て難しい顔をする。地図からするにかなりの広さだ。さらに地獄の下層ときた。
地獄はすり鉢状に成り立っており、最上層が第1層となっている。最下層である第9層、その最奥に氷獄の牢と呼ばれる区域があり、ルシファーはそこに封じられていた。
下層に行けば行くほど強力な悪魔も多くなる。さらには下層を根城、拠点、領地としている魔王も多い。
男は端末で地図を弄りながら話す。
「数だけ見たら下層自体の守りは一見薄くなってるっぽいけど、その分質も上がってくる。戦力的には上手い配分されてるよ」
「それと可能なとこまで探ってみたが、見たとこ『大罪魔王』に動きは無かった。何がなんでも今回の事には無関係を貫こうとしてるみたいだぜ」
『大罪魔王』とは、七つの大罪を司る七柱の強大な魔王の事だ。これを提唱したのはルシファーだった。
「余程、今のルシファーには関わりたくないみたいだな」
ドミエルにコートの男が笑って返した。
「当たり前っしょ。別に天界潰すぞって声掛けられてないみたいだし、本当に天界殺りたいならルシファーの後にふっかければいいしな」
「……それもそうか」
「つまりルシファーのとこ以外だと、便乗してくるとしたら小さい派閥だけどそれなりに力のあるやつってことか……」
サバオトは難しい顔をして腕を組んだ。
「まあ、まとめるとだ。救出行くんだったら第6層万魔殿の南北に向かう。ルシファー派でなくてもどっかの上級ぐらいが来る可能性はある。まあそっちは本軍にでも任せりゃいいから置いとこう。大魔王クラスのは他は来ないはずだからその辺は大丈夫。ま、こんなもんでしょ」
サマエルはコートの男の言葉に頷き、一つ息をついた。
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