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「早く行かなきゃ」
玄関で雑にスニーカーを脱ぎ捨てたフロラ。どすどすとリビングへと歩いていくと、中から声が聞こえる。
「お母さんまたどっか行くの?」
フロラがリビングに入ると、娘のローラがテーブルで本を開いて勉強をしていた。
「あ、あぁ…ちょっと用事があって…ってかアンタ学校は?」
「今日から試験だって言ったでしょ?午前で学校は終わりだよ」
フロラは“あちゃぁ”と顔を若干しかめる。
「夜遅くなるかもしれないから、8時になっても帰ってこなかったらこれで何か頼んでおいて」
フロラは財布から1000D紙幣2枚を取り出すとテーブルに置いた。
「えぇ〜?またぁ!?」
ローラからブーイングが上がるも、フロラはカバンを置いて玄関へ向かう。
「じゃ、行ってくるから」
家を出たフロラはあたりを見回し、姿勢を低くした上で気配を消して裏庭へと向かう。
裏庭の倉庫前に着くと、ゆっくりと、静かに倉庫の戸を引いて中に入った。
そして同じように静かに戸を閉める。
暗闇と工具や土の匂いの中、フロラは右手首の動脈部分に左手を当てて魔力を流し込む。
その瞬間彼女は空間に吸い込まれるように消えていった。
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