1.最期の日

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1.最期の日

「バエルはどこだ!!」 「探せ!!必ずこの村の何処かにいるはずだ!!」 低く唸るような声があちこちから聞こえる…… 少年は羊小屋の更に奥にある倉庫のすみで小さく震えていた。 この小屋いっぱいにいた羊たちはもう奴らの腹の中…… 村の住人も残すはこの少年ただ一人だった。 少年が異変に気づいたのは一ヶ月ほど前…… 羊たちの散歩を終え、趣味の絵を描くために森に入ったときだった。 普段は穏やかな森に緊張感のようなものが漂っている。 その異変を探る為、普段は立ち入らない森の奥へと歩みを進めた。 「なんだあいつらは!?」 少年は森の奥でオオカミのような影をいくつかみつけた。 しかし少年が知っているそれとは事情が異なっている。 なぜなら目の前のオオカミは後ろ足で立ち、人間の言葉を話しているのだから…… パッと見た目は灰色の狼だが、手足の爪と口を閉じていてもはみ出ている牙は離れていてもわかるほど大きく、鋭い。 ゆっくりと彼らに見つからないように近づき、草むらに隠れ、聞き耳を立てる。 「今度の村はどうだ?」 「あぁ、家畜も人間も充分いるぜ。ただまぁ猟師もいるし、ちょっと慎重にやらねぇとな。」 オオカミのような獣が何やら相談しているのが聞こえる。 しかし決して良い話ではなさそうだ。 (村って僕の村のことか?) 少年の心がざわつく。 「まぁ、襲うにしても焦っちゃいけねぇ。とりあえず今日は様子見だな。」 その言葉を聞いたとき、少年は思わず声が出そうになったので両手で口を塞いだ。 その後、オオカミたちは二言三言、言葉をかわした後、ほうぼうに散っていった。 少年はしばらくその場から動けなかったが、なんとか立ち上がる。 (村が化け物に襲われる!早く知らせなきゃ!) すでに夕日が落ちようとする帰り道を少年は全力で駆け抜けた。
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