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2.夜の森
少年は村に帰るなり、村長の家に駆け込んだ。
ただごとならぬ様子に村長とその奥さんは驚き、何事かと問いただした。
「どうしたバエル!?何かあったのか!?」
バエルと呼ばれた少年は息も絶え絶えになりながら村長に自分の見たものを正直に話した。
「森の…奥で…化け物を…奴らはこの村を襲うつもりなのかもしれない……」
そこまで言うとバエルは膝から崩れ落ちた。
「バエル大丈夫なの!?ほら、こちらに座りなさい。」
村長の奥さんは優しくバエルを抱きかかえ、椅子に座らせ、水を渡した。
「村に化け物……。それは本当かバエル?」
村長はバエルの体調を気遣うようにゆっくりと聞いた。
バエルもだんだんと落ち着きを取り戻しゆっくりと話し始めた。
「森の奥で狼みたいな奴らが相談しているところを見たんです!『家畜と人は十分だ』とか『少し様子見だな』とか…。」
二人はバエルの話しを一通り聞くと考え込み、村長が口を開いた。
「確かに昨日来た旅商人から近くの村が獣にやられて全滅した。という話を聞いたところだ。よし、バエル、そこに案内してくれ。ハンナは猟師を3人ほど呼んできてくれないか?」
そう言うと村長は奥から猟銃を取りに行き、ハンナは家を出て猟師を呼びに行った。
準備ができた頃にはすっかり夜になっていたが、一行は松明に火を付けて森の中に入ってもいった。
バエルを案内人として。
しばらく森の中を歩き、バエルが化け物を見たという現場にたどり着いた。
月明かりがその場所を不気味に照らしている。
「ここで見たんだな?」
村長の問いかけにバエルはうなずいた。
「よし、3人は周辺を探してくれ、バエルはワシから離れるんじゃないぞ。」
3人の猟師はそれに従い、それぞれ森の中に消えていき、村長とバエルも何か痕跡がないかと調べていた。
すると……
「バン!」
突如、静寂を切り裂くような銃声が森に響いた。
「どうした!?」
村長が銃声のした方に向かって叫んだが、何も反応は無かった。
それを聞きつけた二人の猟師も加わり、もう一人の猟師のもとに急いだ。
駆けつけると猟師がこちらを向いて苦笑いしているではないか。
「すいません。急に草むらからうさぎが飛び出して思わず撃っちゃいました。こちらは何もありませんよ。ほんとにすいません。」
その言葉に大人たちは安堵の表情を浮かべた。
しかしバエルは言葉にできない違和感を感じていた。
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