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 鷹司の優しさは執念、執着そのものであり到底喜べない。 「そこまで固執するなら、あなたがわたしを飼えばいいんじゃないの?」  素朴な疑問が出る。瑠璃子としては誰の愛人になろうと心から自由になれはしないのだから。 「……ほぅ、瑠璃子ちゃんは僕の愛人になりたいんですか? リアムの愛人になって宝来のおじさまや菫君を助けたいんじゃ?」 「もちろん助けたいわ。でも、無理だって顔しているわ、あなた。そうなんでしょう?」 「はい、リアムの愛人になっても宝来家は救われません。リアムが紳士の皮を被った獣だからです。そして僕も瑠璃子を飼ってあげられない。そういう取り引きなんですよ」  抱き寄せ、後頭部を撫でてくる。瑠璃子はカップを落としてはいけないと置こうとしたが、鷹司は自らの口元へ寄せさせた。すん、通った鼻筋で香りを楽しみ、形の良い唇を上げる。 「取り引きって何?」 「宝来が没落し、瑠璃子ちゃんが僕に売られる筋書きを用意している人が居るんです」
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