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鷹司が軽食を持って再び屋敷へ戻ったのは翌日の事。
「ずっとそうしていたんですか?」
身を清める以外の活動をせず、窓辺に佇む瑠璃子は、指示を与えなければ動かない人形みたいだ。鷹司の来訪に青い瞳を多少揺らすも、どうせまた辱めを受けると割り切ってさえいる。
「食堂に行きますよ。何も召し上がってないのでしょう?」
「……あなたが作るの?」
「サンドイッチを作らせました」
自炊という概念がないだけで空腹であった瑠璃子。施しを今更拒む気力もないため大人しく彼の後へ続く。
「今日も一人?」
「瑠璃子ちゃんを担当するのは僕のみ。それとここでは自分の事は自分でやって下さい。僕は使用人ではありません」
釘を刺し、放っておけば瑠璃子は食事もままならないと分かっていた様子。鷹司は彼女をテーブルにつかせ、サンドイッチを差し出す。
サンドイッチはみずみずしい野菜がたくさん挟まれ、瑠璃子の好むバジルソースの香りが鼻孔を擽る。
「……」
瑠璃子は無意識で手を伸ばしかけ、ハッと引っ込めた。すると鷹司がカップを置く。
「どうぞ。茶葉は宝生家で飲んでいたのと同じですが、淹れたのが僕なので味は保証しませんが」
「あ、ありがとう。いただきます」
礼に鷹司は眉を潜めた。
「礼など要りません。商品の管理をしているまでです。朝食が済ませたらまた勉強ですよ」
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