奈落と堕落

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■  鷹司が軽食を持って再び屋敷へ戻ったのは翌日の事。 「ずっとそうしていたんですか?」  身を清める以外の活動をせず、窓辺に佇む瑠璃子は、指示を与えなければ動かない人形みたいだ。鷹司の来訪に青い瞳を多少揺らすも、どうせまた辱めを受けると割り切ってさえいる。 「食堂に行きますよ。何も召し上がってないのでしょう?」 「……あなたが作るの?」 「サンドイッチを作らせました」  自炊という概念がないだけで空腹であった瑠璃子。施しを今更拒む気力もないため大人しく彼の後へ続く。 「今日も一人?」 「瑠璃子ちゃんを担当するのは僕のみ。それとここでは自分の事は自分でやって下さい。僕は使用人ではありません」  釘を刺し、放っておけば瑠璃子は食事もままならないと分かっていた様子。鷹司は彼女をテーブルにつかせ、サンドイッチを差し出す。  サンドイッチはみずみずしい野菜がたくさん挟まれ、瑠璃子の好むバジルソースの香りが鼻孔を擽る。 「……」  瑠璃子は無意識で手を伸ばしかけ、ハッと引っ込めた。すると鷹司がカップを置く。 「どうぞ。茶葉は宝生家で飲んでいたのと同じですが、淹れたのが僕なので味は保証しませんが」 「あ、ありがとう。いただきます」  礼に鷹司は眉を潜めた。 「礼など要りません。商品の管理をしているまでです。朝食が済ませたらまた勉強ですよ」
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